素に戻る街

私の生まれ故郷の小樽は、ガラス工芸の街です。

今は引っ越し前なので物はあまり増やせないのですが、先のイタリアワインを扱うガラス業者(北一硝子)の、店舗のひとつに寄ってみました。
綺麗なものは、見ているだけでも楽しいです。

ベネチアングラスも(勿論)置いてありますが、切子細工のグラスや、自然光/電灯で色が変わるグラス、ステンドグラスなどいろいろあって、まるで博物館のようです。

ここは私が6歳まで住んでいた場所で、親戚もおり毎年のように訪れていたのですが、未だに市内でも知らない地区が多く、これは地下鉄のない、更に山坂が多い地理条件によるものかと、ぼんやり考えたりしました。

三号館内にある北一ホール。
照明は灯油ランプで、毎朝、167個のひとつひとつに灯をともすのだそうです。

カフェになっているこのホールで、私と夫が巨大シュークリームのセットを頼み、ウキウキはしゃいでいると、穏やかな風貌の男性客が苺ショートとコーヒーを載せたトレイをもってやってきて(セルフサービスなのです)近くに座り、文庫本をおもむろに取り出し、ランプの灯りのもと、静かに頁をめくり始めました。

素敵・・・。

地元民かどうかは存じませんが、生活に根付いた感のある一連の所作がかっこよかったです。

私もああいう人を目指したいものだと、またぼんやりと考えたりもしました。


でも生まれ故郷のこの街は、本来の無邪気な自分でいていいような気にさせられます。


楽園の住人

北海道生まれ北海道育ち。現在、ぶどう畑の傍に住む。